STAGE06
「観測隊の出国」について
広報さんに聞きました!
小濱広美さん
国立極地研究所
広報室 副室長
(プロフィール)
アニメ制作にご協力いただいた極地研の広報担当。自らも南極経験があり、第52次南極観測隊で庶務・情報発信担当として参加している。
実際の観測隊は、フリーマントルまで全員行動
「体重を含めて100kg」の荷物制限は本当なの?
ーーところでアニメ第5話では、南極へ持っていく荷物についての描写がありました。「体重を含めて100kgまで」というのは本当なんですか?
小濱:それは「しらせ」からヘリコプターに乗る際のルールですね。南極に着いたら、観測隊員は「しらせ」に格納されているヘリに乗り込んで昭和基地へ入ります。「しらせ」が昭和基地近くに接岸し、物資が基地に運ばれてくるまでには一週間程度かかるので、当座の生活用品だけを手荷物として持っていくんですが、その際の規定が「体重を含めて100kgまで」なんです。これは飛行機の荷物制限と同じく、ヘリが安全に飛行するための積載制限ですね。
ーーじゃあ「しらせ」にはもっと多くの荷物を積んであるんですね。
小濱:そうです。「しらせ」に積み込める荷物は「船室の棚に入る分だけ」という決まりで、重量というより容積が大切ですね。ひとり当たりでだいたいダンボール5〜7箱分は積み込めると思います。
ーーそうだったんですね。アニメを観た時に「大柄な男性はどうするんだろう?」って心配に思ってました。
小濱:あはは(笑)。心配いりません。
ーーあれ? でも一時的とは言え、大柄な人は最初に持っていける荷物はちょっとだけということになりますよね。
小濱:そこは体重の軽い人に荷物を預けたりして、みんなで協力し合っています。ヘリに乗り込む全員のトータルが「人数×100kg」を下回っていればいいわけですからね。
ーーちなみに荷物の中身についてですが、皆さんどんなものを持っていかれるんですか?
小濱:特に規定はないので、完全に個人の裁量です。シャンプーなどの生活用品は基地に公共のものもありますが、それでも自分専用のものを持っていく人もいますし。あとは常備薬やタバコなどの嗜好品とか。特に越冬隊は18カ月分の使用量を正確に計算してパッキングする必要があるので、準備はかなり大変ですね。最後にはタバコが足りなくなり、到着したばかりの夏隊に譲ってもらったりする人も時々見かけます。
コンテナに積まれた荷物
ーー計算ミスですね(笑)。服や下着などはどの程度持っていくんですか?
小濱:私の場合は一週間程度しか持っていきませんでした。取りあえずTシャツを多めに持っていきさえいれば、基地内ではそれで十分ですし、外に出る際にはそれに防寒着を着るだけですからね。
ーーへえ〜。意外と少ないんですね。
小濱:定期的に洗濯しますし、何より南極ではお洒落をする必要がまったくないので(笑)。意外と何とかなりますね。
ーー逞しいですね! 今日はありがとうございました。
写真協力:国立極地研究所
ーー第6話でキマリたちは出国し、シンガポール経由でオーストラリアのフリーマントルに向かいます。実際の観測隊の皆さんもこのルートを使用するんですか?
小濱:いえ。実際は隊員は成田空港に集合してからパース(オーストラリア)へ向かいます。フリーマントルはパースから約20kmのところにある街なので、そこからバスで移動して現地に到着する流れです。
ーーキマリたちの航路はレアケースなんですね。ちなみに現地までの移動は個人単位で行うんですか?
小濱:観測隊員みんなで移動しますね。成田で集合して、ささやかなイベントを行ったあと、全員で日本を出国します。
ーー成田でプチ出国式が行われているんですね。
小濱:はい。文部科学省の方や極地研の所長、観測隊員の家族などが集まります。特に公式にアナウンスしているわけではなく、あくまで内々のイベントなのですが、メディアの方が取材に来られることもあるので、ニュースでご覧になった方もいるかもしれません。いずれにしろ出国は全員行動で、けっこう規律正しく動くんですよ。
ーーたしかにそのほうがキマリたちのようなアクシデントも回避できそうですね。
小濱:そうですね。100名近くの隊員がいますから、バラバラで動くといろいろとリスクが大きいんですよね。なので航空券も極地研が一括購入して成田で配布するようにしたりと、なるべく紛失の恐れがないような流れにしています。