宇宙よりも遠い場所

SPECIAL

STAGE03

「極地研」って何? 
広報さんに聞きました!

小濱広美さん

国立極地研究所
広報室 副室長

(プロフィール)
アニメ制作にご協力いただいた極地研の広報担当。自らも南極経験があり、第52次南極観測隊で庶務・情報発信担当として参加している。


実物に触れる「南極・北極科学館」

ーーアニメ第3話の最後でキマリたち4人が訪れているのは「南極・北極科学館」です。これは国立極地研究所(極地研)にある実際の施設なんですよね。

小濱:そうです。すごくしっかりと取材していただきました。

ーー作中では、ペンギンの剥製や掘削ドリル、雪上車などいろいろな展示品が登場していますけど、これらも実際に科学館に展示されているんですか?

小濱:もちろんです。科学館に展示してあるものは、実際に南極で使用されていたものばかりで、キマリたちが乗り込んで「狭い」と漏らしていた雪上車も、1968年に南極点まで往復5,200kmを走破した本物の雪上車で、それをほとんど当時のまま展示しています。

展示してある雪上車とペンギンの剥製

ーーすご〜い!! じゃあオーロラシアターも?

小濱:はい。南極と北極のオーロラを見る事ができます。常設展示で両極のオーロラが見ることができるのは、日本でもココだけ。他にも、南極の隕石や氷に触れることもできますよ。

ーーえ? 南極の氷に触れちゃうんですか?

小濱:そうなんです。南極の氷って、水が固まってできたものではなくて、降り積もった雪が固まってできたものなので、深い層の氷には何十万年も前の空気がそのまま閉じ込められていて、科学的にも貴重なサンプルなんです。

南極の氷

ーーそんな貴重な氷に触っていいんですか?

小濱:この展示のために、毎年観測隊員たちが氷山から切り出して持って帰ってきてくれるんです。それを毎日少しずつ出してます(笑)。本物に触れるというのはふつうはできない体験ですから、来館される方々にもすごく喜んでいただけていますね。

ーーそれは隊員さんに感謝しなきゃですね。ところで、来館される方はどんな方が多いんですか? やっぱり理系の学生さんとか?

小濱:いえいえ。それがけっこう幅広くて、小学生くらいのお子さんも多いですし、高齢者の方もとても多いですね。

ーーそうなんですね。それはちょっと意外かも。

小濱:「実物を見て触れる」というのは子供さんにとっても楽しいんだと思います。説明ボードにはなるべくフリガナをふったり、手作りのPOPなどを充実させるなどの工夫もしていますから、幅広い年齢の方々に気軽に楽しんでいただけると思いますよ。

ーー高齢者の方が多いというのも、何か理由があるんですか?

小濱:世代的に、南極観測事業への思い入れが強いというのはあると思います。第1次隊が日本を出港したのは1956年で、当時はかなりの注目を集めたそうですから。

ーー1956年というと、まだ敗戦から11年しか経っていませんね。そんなに早かったんですね。

小濱:そうなんです。戦争の傷跡を残しつつ、ようやく国際連合に加盟して国際復帰を果たした年でもあって、多くの日本人が宗谷(※当時の南極観測船)が出港する姿に、日本の未来の姿を重ね合わせたのではないかと思います。

南極観測船「宗谷」

ーー日本人の夢や希望が詰まった存在だったんですね。

小濱:そうだったと思います。特に戦中・戦後にお生まれになった世代は、幼少時代にその空気を肌で感じているので、今でも忘れずに心に残っているみたいですね。お孫さんを連れて来館された方が、展示を見ながら当時のことをお孫さんにお話になるということも多いんですよ。

南極観測は「環境変動」を明らかにするため

ーーそもそもの話ですが、極地研はどうして毎年南極観測を行っているんですか?

小濱:簡単に言うと「地球の環境変動」を明らかにするのが目的ですね。例えば温暖化が話題になっていますけど、地球はこれから先もどんどん温暖化していくのか、あるいはどこかで寒冷化に転じるのか。その長期的なメカニズムを解き明かすには、南極で採取したデータがとても役立つんです。なにしろ南極はほとんど無人、しかも氷点下の世界ですから、サンプルの保存状態が極めて良いんですよね。まるでタイムカプセルのようなんです。

ーーじゃあ何かとんでもないモノが発見される可能性もあったりして。

小濱:そうですね(笑)。南極はまだまだ分からないことだらけですから。

ーー未知の気象現象とか、新種の生物とかも?

小濱:きっとあると思いますよ。1982年に世界で最初にオゾンホールの存在を発見したのも日本の南極観測隊ですし。私も観測隊に参加したことがありますけど、南極には未知の生物が見つかっても全然不思議じゃない雰囲気がありますよ(笑)。

ーーすごい! 地球最後のフロンティアですね。

小濱:そうかもしれません。それらの発見がすぐに私たちの生活に役立つというわけではありませんが、南極観測は科学界全体の発展には欠かせない事業なんです。

ーーなるほど。とてもよく分かりました。「南極・北極科学館」に行けば、もっといろいろな事が知れそうですね。

小濱:アニメを楽しんだあとには、ぜひ科学館にも遊びに来て下さい。キマリたちの南極生活が、より身近なものとして感じてもらえると思います。それをきっかけに、さらに南極や極地観測に興味を持っていただけたら、私たちとしても嬉しいです。

ーーありがとうございました。


■「国立極地研究所 南極・北極科学館」DATA

開館日 毎週火曜日〜土曜日
開館時間 10:00〜17:00(最終入館16:30)
入場料 無料
住所 東京都立川市緑町10-3
アクセス JR「立川駅」より徒歩25分
多摩モノレール「高松駅」より徒歩10分
立川バス「立川学術プラザ」より徒歩1分

写真協力:国立極地研究所

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